ロスのモーテルで、、

その笑顔は、まだステージメイクが遺されたままだった.
帰りついてすぐに、急いでこの料理をした事が伺えた.
スクランブルエッグに、ベイクドポテイト、サラダ、コーンスープ、
そしてブレッド、と言った一見粗末な夕食だが、
僕のそれに比べたら各段の違いだった、、
ばかりでなく、話し相手を目の前にしての夕食は実に久しぶりで、
何から手を付けて良いのか分からないくらいだった. 
机を挟んで彼女が座るのを待つと、
腰に付けたほんのお飾り程度のエプロンを手でのばしながら、
上目使いで椅子に座った.
“じゃ、食べましょう、、、、”と言って、
軽く両手を会わせ簡単なお祈りをして、
“さ、、どうぞ、、”
ちょっとの沈黙が続いて、
フォークを運ぶカチャカチャと言う音が部屋に響いた。
最初に言葉を発したのは彼女だった.
”日本ってどんな所???”
“どんなとこって、、、そうだね、東京のような、大都会と、
山と川の綺麗な田舎があって、程好くミックスした感じかなあ、、、”
”ロスと比べるとどう???”
“僕もロス、まだあちこち見てないけど、、
都会のビルはロスよりも高くって、もっと密集してるよ、”
そして、僕からも聴いて見た.
”宿泊はこんなモーテルがおおいの??”
“最初の頃はホテルを取ってたの、、だけど、荷物もおおいし、
この方が楽だって想って、、、最近はこんなモーテル住まいよ、”
”安全?” 
“だから車を後ろに止めさせて貰うの、、目立つでしょう?”
”この劇場は何日?”  
”ここは3日、そして次が2日、わりとこの街の近くだから、
ここに1週間泊まって、この廻りの3個所で御仕事、、、
そして又別の州に車で動くのよ、”
”一人で?” 
”最初はマネージャーが一緒だったけど、
最近は新入りに付いて廻ってるから、一人が多いの、、、
あっ、マネージャーに電話入れなきゃ、、”