ロスの夜

早口での弁解じみた言葉の連射に、
彼女はステージで見せたとおなじ可愛らしい、
まるで少女のような笑顔をかえして、言葉をさえぎった.
“わかってるわ、、真赤になった顔を見たら、わかるわよ、”と答えてくれた.
急に嬉しくなった僕からも、笑顔がこぼれた. 
重そうな荷物を運ぶ手伝いをしてちょとその部屋に足を入れると、
女性の部屋特有の香水の香りが鼻に飛び込んできた.
部屋中に広げられた衣装の数々、
ここがモーテルの一室である事を疑うほどだった.
荷物を部屋の片隅に置くと、”じゃ“と言って部屋を出た.
”あ、、ありがとう、、”ドアが締まる直前に彼女の明るい声が帰って来た.
自分の部屋に帰るとすっかり上ってしまった血を醒まそうと、
シャワー室に入り.冷たいシャワーを頭から被った.
一項に気持ちは収まらない.
それもその筈だ。
先ほどステージで見せたあの笑顔が、隣りの部屋にいて、
ステージで見たあのプロポーションが次のドアにいるのだから、、、
ギターを出して何か思い出し思い出し弾いているが、
知らずと、“JUST LIKE A WOMAN“になり、
“LET‘S SPEND THE NIGHT TOGHTER“
になってしまう。
そして隣りの音が気になってしょうがない.
物音一つに頭は反応して、今何してるんだろうとグルグル考え出す. 
遂に壁に近づき、節穴を探す. まるでマンガの世界だ.
幸い穴などないから、自分でもおかしくなって吹き出してしまった.