ボストンの、、

車に乗って5分位のアパート風の家についた.
階段を上がって2階の最初の部屋のドアをノックすると、
鍵が開き、中から若い女性が顔を見せた.
ロバートの顔を見て、部屋に招き入れてくれた.
部屋の中では、12人位の人が、車座になり、
其々がギター、マンドリンバンジョーを持って、リフを繰り返していた.
その時に僕がまだあまり聴いた事のない、
だが明らかにアイリッシュ風であった.
アメリカのブルーグラスをもっと辿って行くと聞こえてきそうな音列、
そしてそこに見え隠れする、霧に包まれた山、、、そんな感じを受けた.
僕がその当時一番の興味や刺激を受けてた黒人音楽の雰囲気を、
微塵も感じさせないギグだった.
その中心に座ってギターを弾いてた男性が、
一番歳を取ってる様に見えたが、30なかばだったろう。
フラットピックによるクロスピッキングは,
すばやく、的確で、その音楽に躍動感を与えていた.
ロバートの住所を見つけた、ノーマンブレイクの演奏を彷彿とさせた。
曲が終わるのを待って、ロバートが、僕を皆に紹介してくれた.
それから一時間ほどそのギグは続いた.
疲れが出たのか、眠そうな僕の目付きを見て、
ロバートが、じゃあ帰ろうと言って、その部屋を出た.
車に乗ってすぐに、“どこか行きたいとこがある?”の問いに、
“実は今夜ボストンのホールで、フィービースノウのコンサートがある筈なんだ.”
“何時から?“ “6時半開場だったと想う、、“
“じゃ、会場につれてってあげるよ、、”

15〜6分、街の真中に向かって走って車を止めてくれた.
ふるい公会堂みたいな、歴史を感じさせるた建物だった.
歩道からエントランスまで歩いて行こうとすると、
切符売り場と分る小さい小窓の付いた場所との間に若い女性が立ち、僕を見た.
2〜3歩進むと、相手も近づいて来て、“切符は持ってますか?“と聴いて来た.
”いや、今から買うんだ.“というと、
“じゃこれ買ってください.“と、一枚の切符を見せた. 
一緒に来る筈だった友達が来れなくなって、余ってる切符だった.
“ありがとう、貰うよ、、“と言って代金を渡した.
エントランスで半券を渡して会場に入った.
舞台中央の15番目くらいのちょうど良い席で、彼女とは並びの席だった.
10分くらい過ぎて、照明が落ち、
薄くらい舞台に数人のメンバーが袖から表れた.