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彼もまだ、ナッシュビルには行った事はないと言ってた。
“良かったらその後ボストンにおいでよ、、“
彼の軽い気持ちの誘いに反応してしまった。
、、、、ニューヨーク、、、、ナッシュビル、、ボストン、、、
とすると、、 フィービー、、、&、、ダニー、、、いいかも???
楽しい一日をほぼ、彼の部屋で過し、又会う事を約束して家を出た.
冬のボストンの夜は、寒い.
日本でも北は新潟、佐渡までしか経験のない宮崎人には、
この寒さは絶えられない.
ましてこのボストンは、緯度でいくと、北海道、函館の位置だ.

ロバートとの一日ですっかり気持ちも落着き、
楽しさで心が満たされた分で、なんとか凌いでいる状態だった.
ホテルに辿り着くと、もう外に出歩こうと言う気持ちは失せていた.
シャワーを浴び、ベッドに滑り込み、訳の分からないホームドラマを見て、過した.

朝を向かえ、今日はアメリカの大都市、そして世界最大の都市、ニューヨークに行く.
チェックアウトをすませ、外に出て、タクシーを拾い、ボストン空港に急ぐ.
10分もなかったと思う。ボストン空港で、ティケットを買う.
ボストンと、ニューヨークを繋ぐ路線は、日本にはまだなかった、
シャトル便と言うもので、時間を決めずに乗客が揃った時点で運行する。
機内に乗り込むと、あさ10時という時間もあるのだろう、
サラリーマン風の男性、女性が多い. 
でも体格が良いので、皆、重役に見えてしまう.
まして気のみ気のまま、食う物食わずの旅をしていると、
廻りは自分と違う世界に見えてくる.

ほぼ一時間後、大都会の摩天楼が眼下に広がった.
ケネディ―空港に降りた飛行機は、大都会の中に僕を放り投げた.
何をしに来たのか分らずに来ていたら、
もくず、泡となり消え入ってしまうところだったろうが、
ただ単にギターをめがけて行ったが為に、行く先は決まっていた.
タクシーに、行く先のおよその番地、48丁目を告げた。
タクシーは車の波をまるでサーフィーンでもするかの如く潜りぬけ、
摩天楼の中をも通り抜けた.
グレイのビルの谷間に降ろされた僕は、調べてあった番地を頼りに歩き始めた。
すぐに MANNY‘S のロゴが目に入った. 
タクシーは間違いなく僕を目的地近くに運んでいた。
この48丁目には、およそ20メートルくらいの通りに、
何件もの楽器店が軒を並べていた.
このマニーズは、ロックギターリスト全ての憧れのジミヘンドリックスが、
いつも立ち寄り、ギター、ファズ、そして、シンエイのユニバイブを買った楽器店だ.
中に入ると、実に色んなロック奏者のサインを伴ったポスターが誇らしげに掲げてあった.
勿論ジミヘンドリックスもある。 キースリチャード、エリッククラプトン。
上げ出すときりがない. 
それくらいギターリストにとっての楽器のメッカとも言える存在なのだ.
中をズーット見回ったが、’60年代にストラトテレキャス、そしてSGなど
割と新しい新しいギター、ベースはフロア―一杯に揃っているが、
僕が探していた、‘50年代のストラトレスポールは何処にもない.
目新しいエフェクタ―も山とつまれてた。 
少々がっかりして、外に出ると、アレックスの文字が目に入った.
この店も“楽器の本”で紹介されてた。 
ウィンドウには、ヘッドの装飾がこったレスポールが目を釘付けにする位置に飾られてた.
“エリッククラプトンがブルースブレイカーズ時代に使用してたギター“ 
とのキャプションが付けられていた.
ウソだ――!! こんなギターじゃないぞ――!!
それは確かにあの時期には珍しい、サンバーストのレスポールだったが、
あんなごちゃごちゃしたヘッドではなかった。
まるで、フラットマンドリンのようなヘッドの装飾だったからだ。
この店は楽器の本でも一寸疑わしいギターを紹介されてたが、
ここまでお客をバカにするとは、、、と思いながらも店の中に入って見た.
確かに壁には、’60年代のギターが、ところ狭しと吊り下げてあった.
’50年代のストラトは一本もなかったので、
ガラスケースの向こう側に立つスタッフに声を掛け、
’50年代のメイプルネックのストラトはないですか?
と聴いて見た. 
するとその若いスタッフは、バックルームに行き、
何やら話声がして、しばらくすると、‘30中ばの紳士が、
大きな黒いケースを大事そうに持って表れた。