NATIONAL 続き、、

送金を終え、一週間が過ぎると、心の中は何時ギターのケースが届くのか、
そればかりが気になり、仕事も手に着かない状況が続いた。
そして二週間が過ぎると、まだかまだか、、
三週目に入ると、運送会社の車が来るたびに、かけより、、
そして四週目、日本通運の航空貨物に電話をしてしまった。
今考えると、どう答えようもない質問をしたのではないかとおかしくなってしまうが、
二十代半ばで無け無しの金を送って待つ身だった事を思えば、
しかたのなかった事のような気もする。
そして五週目に入ったある日、電話が入った、
“大石隆文さんはこちらですか?“
大阪国際空港の入管ですが、大きな荷物がアメリカから届いています。“
“間違いありませんか?“ “また税金額をお知らせ致します。“
そして次の日、税金を知らせる電話が入り、その金額をすぐに振り込みをすませ、
その通知の電話をした。“それでは明日のお届けになると思います.”
いよいよ、夢にまで見たギターが届く、、、心は踊り始めた。
そして次の日、日通の車が、その荷物だけを乗せて家の横に停車した。
運転手が降りるのが早いか、家を飛び出して、荷物を受け取りにいった。
“それでは受け取りの判子を、、、“ 遂に届いた。
逸る心を押さえながら、荷物の封を開け、大きなダンボールの箱の中から、
ショックをよける為に入れられた英字の新聞の束を掻き分けて、
黒い真新しいギターケースを弾き出した。
そして、両手に手袋をして、そのギターケースのノッチをハズすと、
ピカピカに輝いて見えるギターのボディーが、でてきた。
指紋を残したくなくてはめた白い手袋のまま、弦をはじくと、
心地よい響きが体じゅうに聞こえてきた。
始めてそのギターの写真をブルースマンのレコードジャケットで見てから、8年、
シングアウトの広告を見付けてから、
一年近くが過ぎて手元に届いた1930年製のNATIONALギターは、
自分の憧れに対する気持ち以上に輝いていた。