夕暮れのサンフランシスコベイ

ダラスを飛立った機体が、サンフランシスコに就いた時間は記憶にない.
およそ昼位だったろう. 
調べておいたホテルにチェックインしこれまた調べておいた楽器屋さんをチェックする.
サンフランシスコのチャイナタウンも歩いてみよう、、、と計画を立てる.
早速荷物をおいて、街を散策する事にした。
さすがに人どうりが多い. フィッシャマンズワーフ等、一通り観光地を歩き回る。
サンフランシスコ湾の一画に、木に囲まれた古めかしい建物が目に付いた.
近づいて見ると、自然博物館とでもゆうのだろうか、面白そうなので、中に入って見た.

ベニヤ板一枚くらいの大きな板に白い大きな紙が張られ、
四方を吊り下げられて、揺らいでいる。
その上に棒で固定したマジックインクを置くと、
揺れる度に、インクがひょろ長い楕円を弾いて行く。
それは段々と線がずれて幾何学模様になる. 
地球の自転の作用を体験出来るシステムだ.

一枚のガラスを挟んで、二人が向き合わせで座ると、
電気の明るさを調整する事で、二人の顔が重なって見えたり消えたりするシステム.

マジックガラスの作用で、灯りを暗くすると、自分の顔が、髑髏になるシステム.

小さな部屋に木琴の小さいのが幾つか並べてあり、
何人かで叩くと、部屋中に音の共鳴が響きだすシステム.

色んな体験を自分の手で出来る、簡単だけれどすごく何かが理解出来る実験システムが
館一杯に置いてあった.

その館を出ると、目の前にはサンフランシスコの入江がある.
そしてその廻りには、色んな工夫の凝らされた 体育道具のようなものが配されている.
何人かの人が、ジョギングをしながら、それに体を委ねたり、しながら走り去る。
陽が傾き、辺りが暮れなずんで来た時、行く先の方から二人の年老いた老夫婦が、
手を繋いで歩いてきた。
すれ違い時に、軽く会釈をすると、可愛い笑顔と共に、聴き取れない位の声が聞こえた.
歩き去る二人のほのぼのとしたシルエットは、僕の目に、心にも、鮮明に焼き付けられた.
“サンフランシスコベイブルース”でも、“ドックオブザベイ”でもない
メランコリックなメロディーが浮かんできそうだった.