その4、
彼女をテキサスに見送って、一人になったら、急に心細くなった自分がいた。
ロビーを出て、"さあ、今夜は何処へ泊まろうか??”とベンチに腰掛けたら、
すぐその前を小旗を先頭に、十数人の日本人の団体が通り過ぎて行った.
"アレにしておけばよかった、、、"と思わなくもなかった。
気を取り直して、タクシーに乗り込み、
事前に調べたダウンタウンのホテルの名前を伝えた.
タクシーの運転手はジャマイカ人で、出稼ぎに来ていると言ってた。
そして振りかえりながら、"何をしにきたのか?”と聞いた.
"ブルースに興味があって、ギターを探しに来た"と答えると、
"おれも音楽は大好きだ"と答えた.
そうするうちに、調べておいたホテルらしい所に就いた.
荷物を取り代金を支払って、ロビーに入り、
フロントに"シングルルームを、、、”と伝えると、不思議な顔をした。
そして、"ここは今老人専用のマンションになってる”と言った.
しかたなしに外に出ると、次に調べておいたホテルへ向かった.
新宿にあるような、縦長のビルの前についた。
フロントに行くと、半袖にタトゥーの目立つ小太りの人だ.
部屋代を聞くと、20ドルだと言う。
"他を当たるよ、"、と振り向こうとすると、"部屋を見てからにしなよ、”、と
壁に振り向き鍵を取るとデスクの上においた。
振り向く際に,腰のベルトに差してあったピストルが否応無しに目に入った.
指差されたエレベーターに乗り最上階の6階のボタンを押した。
そして6階の部屋番号のかかれたドアの鍵穴に鍵をさし、
部屋の電気をつけると、そこには使い古した感のソファーベットがおかれてた。
これで20ドル、、自分にはOKだったが、腰のピストルが気になった.
それで断る事にしてエレベーターで降りると、途中でドアが開き、
酔っ払い加減の黒人のオジサンが入ってきた.
その次の階で、カワイらしい女の子が入ってきたが、
こちらの"Hi"にも笑顔もくれず背を向いた.
フロントに他を当たる旨伝えて鍵を渡し外に出た.
次にあたったホテルは"アレキサンダーホテル”、、アメリカらしくない名前だ.
いかにも老舗前とした風格あるホテルだった. ここに3泊する事にした。
シャワーを浴びベッドに疲れた体を横たえたが、
神経は昂ぶったままで、いっこうに寝入ることができない.
そして消し忘れのテレビが雑音を出すなか、朝を迎えた.
まずは、ロスのダウンタウンを探索することにした。
いくつかの質屋さんを見つけた。その何処にも、ギターはなかった。
それより、ピストルが目に付いた.
そしてチャイニーズシアターなど、一般的な観光地を見て回った.
"楽器の本"で見た地図をもとに探すとギターセンターがすぐ近くにあった.
入って見たが、日本のギター屋さんとそう変わる様子はなかった。
そして他のギター屋さんを何件か見て回った.
マッケイブス、ハリウッドギターショップ、などなど、、
あちこち歩き回り疲れた体で、ホテルに帰ると、
フロントで鍵を受け取る際に、
"今夜は感謝際で、お店は締まってる所が多いから、
ホテルの地下のレストランで食べるといいよ"と教えてくれた。
その夜は教わったレストランで夕食を食べた.
考えて見ると、朝、ホテルを出てから、夕方帰ってくるまで、
頭の中は、日本語だけだった。ギター屋さんでも見て回れば事たりたし、
食べ物を注文する時以外、英語を使った思いがしなかった。
ベットに横たわりテレビを点け、
大リーグを見てて、"こんな事をしにきたのじゃない!!”、、、と思った.
そこで、明日は予定を変更して夜の便で、友達の住むボストンに行こうと決めた.
友達と話せば、少しは頭の中が英語で考えるようになるだろうと。
後で知った事だが、この感謝祭の日、サンフランシスコでは、
"THE BAND” の "LAST WALTZ"が行われた日だった.